Yasuto
Nakahara
________Chef

適材適所の法則

世の中には、「これにはこれ」といった定番というものがある。

例えば、寅さんには渥美清だし、極道の姐さんは岩下志麻をおいて他にはない。高島礼子もいいが、あの気高さは出せない。そして相手役は、かたせ梨乃だろう。「うちらの惚れた腫れたは玉の取り合いやでぇ」と啖呵を切る。志麻姐さんはカッコよすぎた。

イタリアには星の数ほどのパスタがあるが、その中でもこのパスタにはこのソースといった定番のものがある。

その一つにギターの弦を張り巡らせた専用の器具で切り分けるキタッラというパスタがあり、このキタッラには必ず仔羊とペペローネのトマトソースを合える。アブルッツォ州の名物料理だ。かなり厚めで断面が四角いこのロングパスタはソースの中で少し煮込むことで味がしみ込みおいしくなる。

アブルッツォ州のもう一つのキーワードはディアヴリッロ。これはペペロンチーノ(とうがらし)のことでディアヴォロ(悪魔)のように火を噴くように辛いことからきた方言で、このディアヴリッロを様々な料理に多用する。アブルッツォ人は、ドルチェとフルーツ以外はすべてとうがらしを使用するとまで言われている。

次回は、いよいよマルケ州。
イタリア半島を長靴に例えるとちょうどふくらはぎにあたる小さな州。実はマルケ州はトリュフの産地でその中でも高価な白トリュフが有名。多種類の自生キノコが豊富に穫れ、秋冬の食卓を賑わすのである。

適材適所の法則

「ズッパ・ディ・ペッシェ、アブルッツォ風」
イタリア各地で色々な魚介のスープはあるが、この州の特色はサフランが入ることだ。良質なサフランが栽培されスープや煮込み料理によく使われる。魚介のうまみとサフランの高貴な香りがよく合う。

「スペアリブとパプリカのキタッラ」
本来は仔羊を使うが今回はスペアリブで。スペアリブからおいしい出しがでてうまみをアップ。とうがらしをよく効かせ、とろとろになるまで煮込むのがポイント。

「ボッカ・ディ・ダーマ」
アーモンドを使った素朴なお菓子が多い。ボッカは口のことでよく貴婦人のキスとか天使の唇とか言う。マダムの唇の方が魅力的なのだが...