タイタニック(炊いた肉)
みなさん、はじめまして、映画「タイタニック」主演のレオナルド・シェフプリオです。寒くなりましたねぇ、ほんと鍋が美味しい季節になりました。実を言うと、冬は毎日鍋でいいと思っているほどです。特に、よく汁を吸ったえのきを食べる時が至福のひとときです。
しかし、よく考えるとえのきほど不憫な奴はいないと思います。冬以外の季節は、スーパーの売り場でひっそりと誰にも振り向かれることなく、肩身の狭い思いをしてます。ところが、一旦鍋の季節になると脚光を浴び、品切れ状態に。かといって主役にも成り切れず、でもないとイマイチ。こんなことを考えながら食べているとついつい涙が出てきます。まるで我が身のことのようで…
また前置きが長くなりましたが、今日は冬の定番「煮込み料理」についてお話しましょう。文字通り、肉を煮込む料理なのですが、大きく分けると「ビーフシチュー」と「赤ワイン煮込み」になります。
前者は「フォン・ド・ボー」のような肉の出し汁で煮込む料理。後者は赤ワインと少量の肉の出し汁で煮込む料理なのです。今、収穫月で提供している「美星牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」は後者のほうです。
まず重要なのが素材。ひとつめはもちろんお肉、煮込みに使う肉は肩、タン、そしてほほ肉。牛はつねに口を動かしており、ほほ肉はつねに運動している肉といえるでしょう。さらに他の部位に比べ、ゼラチン質が豊富で、長時間煮込んでもジューシーさが残ります。しかし問題なのは、一頭の牛から両ほほでふたつしかとれないこと。希少価値がありますねぇ。
もうひとつの素材は、やはり赤ワイン煮込みというぐらいですから赤ワインにも少しこだわりましょう。あまり高くなくていいのですが、そこそこのものを使うこと。向いている赤ワインは長時間煮込んでもあまり色落ちしない、カルベネ・リービニヨン種か、メルロー種など値段でいうと1本1,500円前後のフルボディがよろしいかと。私的にはナイスボディがいいのですが、これは好みの問題でして…。最近はワインのラベルに煮込み向きとか親切に書いてありますのでいいですよ。
そして、いよいよ煮込む。私がよく教室で言っているのは、煮込み料理をするときは「寒い冬に風呂に入るイメージで作る」ということです。
どういうことかと言いますと、寒いとき風呂に入るとまず体が縮こまって萎縮します。しかし、時間が経つとじんわり温かくなり、体がほぐれてきます。そして最後には完全にリラックスし、ぽかぽかと気持ちよくなる。
これを当てはめると、まず初期段階では肉が縮こまって固いままです。これが30分ほど経つと柔らかくなりはじめ、肉の旨味が煮汁に流出していきます。それと同時に煮汁の旨味が肉に入っていきます。この相互作用により、肉とソースが美味しくなるのです。
そして最終段階、2〜3時間煮込むと肉は完全に柔らかくなり、煮汁の旨味をたっぷり吸ってトロけるような食感に。そして煮汁は、肉の旨味、野菜などがつぶれて適度な濃度になり、独特のつや、甘み、香りを醸し出します。
しかし、くれぐれも長風呂は禁物。肉も煮込めば煮込むほどいいというわけではなく、確かに柔らかくなりますが、肉の旨味が全部出てしまってはパサパサになります。ソースとのバランスが大事といえます。
最後に肉を取り出し、煮汁をこし、ここでひと工夫、長時間の煮込みで赤ワインの色と香りがある程度とんでいますので、さらに仕上げ用赤ワインを加え完成。くれぐれも赤ワインをケチらないように…
いかがでしたか?「煮込み料理」結構奥が深いでしょう。「煮込みを制する者はフレンチを制す」と言われるぐらい深いです。
さぁ、収穫月「美星牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」いつ食べる?「今でしょ!」ちょっと古いってか!?
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