Yasuto
Nakahara
________Chef

シェフをキャンプに連れてって

自然学者でキャンプ評論家に C.W.シェフル です。
今日はキャンプの心得について講義しましょう。キャンプというものはそもそも自然を楽しむもの。晴れの日もあれば雨の日もある。暑い時もあれば寒いときもある。

突然、熊に襲われることも。スズメバチの大群に襲われたり、ヘビに噛まれたり、台風でテントが飛んだりとそれはそれで仕方ない。そういうことをひっくるめての上でのキャンプなのである。

どこかのシェフのように雨だから中止しようとか虫がいやだとか暑いとか寒いとか。自分の枕じゃないと寝れないとか言っているようでは話にならない。

人間というものは自然の中に放り出されると本性が見えてくる。原始的な環境に置かれることでまとっている理性とか剥がれてくるのだ。だからその人の本性が見たければキャンプに連れて行けばすぐわかる。それもあまり設備が整っていないキャンプ場がいい。

これから結婚を考えている人たちにはキャンプとか登山に行くことをオススメする。つまりオシャレなカフェやレストランで愛を語っていてもその人の本性は表れない。

携帯電話の電波が届かないところで火がおこせて、ごはんが炊けて熊に襲われても一人で逃げずにちゃんと熊と戦って助けてくれる。そんな人だったら結婚すべきだ。だいたい今時のキャンプ場は設備が整いすぎている。

それではお待たせしました。本編第一日目...

<前回までのあらすじ>
9月の連休を利用して2泊3日で中原家とその愉快な仲間たちは四国へキャンプに行くことに。しかし、台風接近もあって3日とも大雨の予想。中止したいシェフの心中とは裏腹に車は四国に突入。果たして中原家一行は生きて本州の地を踏むことができるのか?

実はみなさんに報告しなければならないことがあります。僕は常々自分のことを雨男だと思っていましたが、この日をもちまして晴れ男に改名しようと思います。体質がどうやら変わったみたいです。

そう、キャンプ場に入るなり今まで滝のように降っていた雨が止み、少し晴れ間も。これはもう奇跡としか言いようがありません。他の2家族もすでに到着し準備中。

しかしここで大きな問題が一つ。テントを張った記憶ははるか昔、小学生の頃。しかも昔と違って最近のはえらいコンパクト。恐る恐る開けて組み立て始めると何やらジャッキー・チェンが使う三節棍のような支柱が。

しばらくこの支柱と戯れていると、見かねた隣でテントを張っていたお父さんが「シェフ、これはですねぇ」と親切丁寧にテントの張り方を教えてくれたのです。

実はこの人、中学の英語教師らしいのですが見た目は売れないロック歌手風。一癖ありそうな人だなぁと思ってたら実にいい人。やっぱり人は見かけじゃないんだ。仕事でオーストラリアに何年かいたらしくネイティブな英語を使いこなし、ちなみに僕はネガティブ... 間違えないように。

彼の飯ごうで炊くごはんは最高。川辺でひとりハーモニカを吹く姿はかっこ良すぎる。まさに詩人。そこで僕は彼をこう呼ぶことにした。「ネイティブ・ポエスト」または「孤独なハーモニカ野郎」以下<N.P>

たいていのレディースなら惚れること間違いなし。ま、そんなこんなで無事テントも張れ、テントさえできればこっちのもの。早速<N.P>さんがどこからかよく冷えたビール、それも夢にまで見たプレミアムモルツを持ってきてくれ、カンパイ!ほんといい人だ。久々に本当のビールを飲むとしびれる。

子どもたちは野山を走り回り、川で何やら捕まえ、男の子たちからシェフ、バッタとって〜、カマキリとって、トカゲとってとかほんと男の子って昆虫やらハ虫類好きですねぇ。うちは女の子でよかったと思いながらそーっとその場を離れ、夕食の準備をしている方へ。

何やら女性たちがパンのようなものを作っているではないか。やっと僕の実力を発揮できるときがきた。水を得た魚のように近づいていくとどうもチャパティを作っているらしい。インドでカレーをつけて食べるアレである。

伸ばすはいいのだが、どうやって焼くのかなぁと思っていると、ダッチオーブンの蓋をひっくり返してその平らな面で焼くのである。ダッチオーブンは本当に優れものでいっぺんに僕も欲しくなった。高校の英語の授業の時、あるクラスメートが先生から「友達の奥さん」を英語で訳すとと聞かれ迷わず「ダッチ・ワイフ」と叫んだのを思い出す。

最近ブログに下ネタが多いと苦情が殺到してますが気にせずいきましょう。そのダッチではなくて鉄でできた厚手の鍋である。そっちのダッチは南極に持って行ってください。

かなり長くなってきたのでダッチオーブンの素晴らしさは次回するとしてチャパティを焼いてバーベキューをして肉とか野菜をチャパティで挟んでみんなで食べました。

空には無数の星が... やっぱりキャンプに来てよかったとつくづく思った一日目でした。(つづく)