収穫月シェフは二度死ぬ(潮干狩は命がけ)<後編>
〜前回までのあらすじ〜
シェフが小学生の頃、家族で潮干狩に出かけた。その日は大漁で潮が満ちてくるのも忘れて一心不乱にアサリを獲り続けた。そして、一家の命運もとうとう尽きたと思った時...
なんとボートが近づいてくるではないか!
まさに「地獄に仏」とはこのこと。こうして欲深き中原家の四人は無事救助されたのである。命からがら岸に辿り着いて母が放った一言「せっかく獲ったアサリが台無しじゃあ」...やはり女は強い。
今だから笑って話せるけど、ほんとあの時の恐怖は鮮明に覚えている。たまに夢も見る。そんな目に遭ったのなら二度と潮干狩に行きたくなくなると思うだろうが潮干狩に行く人をみると血が騒ぎ、つい行ってしまう。
父は認知症で施設に入ってしまったが、ふと思う。僕がもしあの時と同じような状況になったら果たしてあの日の父のように勇敢に家族を守れるのだろうかと。
そんなことを思いながら朝届いたはまぐりをランチに使うため下処理している。この時期のはまぐりは身もふっくら詰まっていてイイ味が出る。はまぐりのダシは上品で僕はとても好きだ。そして子供達がもう少し大きくなったら教えてやろうと思う。おじいちゃんはとても勇敢な人だということを、潮干狩は命がけでするものだと。
いかがでしたでしょうか?
怖かったですねぇ、中原家を襲った悲劇!
この教訓から得たものは「食べられる分だけのアサリを獲ること」「欲張り過ぎはケガのもと」である。最後にシェフが人生二度目の死にかけたエピソードはまた先でお話しましょう。