はじまりはいつも雨(の日の翌日)
「新ごぼう」この素材に初めて出会ったのはもう8年ぐらい前になる。5月半ばのランチタイムが終わりかけた時、一台のトラックが勢いよく入ってきた。車の中からひとりのちょっと怪しげなおじさん(年の頃は60歳前後)が出てきた。僕が用心してから近づいていくと「新ごぼう、使わんかね?」と。これが僕と新ごぼうとそれを作るおじさん(ごぼうのおっちゃんと呼んでいる)との出会いだった。
これまでは新ごぼうというものがあるのは知っていたがあまり興味がなかった。このごぼうのおっちゃんの熱心さに押されて20本ほど買ってしまった。買ったはいいが何に使うのか?量も多いし... でとりあえずスープにすることにした。大量の野菜を使い切るにはスープにするのが一番。でもごぼうはアクがあるので色が悪くなるかも?そう半信半疑でつくってみるとなんと上品な香りと味。堀りたてで新鮮なので色も真っ白。他になにもしなくてもオイシイ。まさに衝撃的な瞬間だった。
それ以来、毎年この時期になると「新ごぼうスープ」をつくることにした。個人的には冷たくして飲むことをおすすめする。やっぱり香りが命だから。ただ問題なのはこのおじさんがいつ来るかわからないことだ。だがある時気付いた、必ず雨の日の翌日に突然やって来ることを。なぜかって?それは雨が降れば土がやわらかくなりごぼうが抜きやすくなるから。
ちなみにこの地区は昔、高梁川の川底だったそうでそれがごぼうの生育にいいそうだ。雨が降った日の翌日の軽トラックには気を付けた方がいい。