人間讃歌
震災 ...家族、家、町、すべてを一瞬にして失う。
今まで築き上げてきたもの、二度と戻ってこないものを失う苦しみ。他者がどんな言葉をかけたところで慰めのかけらにもならない。
16年前のあの日、僕もすべてを失った。多分、今までそしてこれからの人生の中で最もつらい経験。今まで阪神大震災について多くを語ったことはなかった。それは自分の中で消化しきれてないことがあったから。16年間悩み続けてきたこと。
僕は無神論者だが、もし神というものが存在するとしたら、なぜ神は僕をあの時神戸という地に導き、つらい経験をさせ、そして生かしたのか?自問自答し続けてきた。気のいい善良な隣の魚屋のおじさんが亡くなり、なぜ僕のような人間が生き残ったとか。
そして、それを上回る大震災が東北地方を襲った。
多分あのすさまじい悲惨な光景を目の当たりにした時、誰もが何か自分にできることがあればと思ったに違いない。まして阪神大震災を生き延びた僕らのような人々は特にだ。
今回のような規模の大震災になると個人レベルではもう手の出しようがない。悔しいが今はその道のプロフェッショナルたちに任せるしかない。僕の経験上、義援金をより多く集め復興に役立ててもらうのが一番いいと思う。
どうか様々なところで義援金活動を見かけたら、わずかでも協力してもらいたい。ちょっとずつの積み重ねが大きな力になる。今は残念だが見守り、祈ることしかできないが、時が経てば必ず東北地方の街まちに笑顔の花がもどってくると信じている。
なぜなら僕は知っているからだ。
苦難の中でこそ人間は助け合い、やさしくなれ、強くなれる。それこそが人間のすばらしさなのだと...