一旬に賭ける
今年はよく筍を茹でる。今日で今週3回目。重なるときは重なるものである。この時期になるとあちこちで「筍のたらい回し」が行われる。茹でてある筍をいただくのはありがたいが、生の筍だとちょっと複雑な心境になるのは僕だけではないと思う。それも大量となると... でもやっぱり自分でゆがいたものはおいしい。
皮をむくときの香りも好きだ。僕はちょっと固めに茹でた方がいい。さらに堀りたてだと先のやわらかい部分は刺身にしてもいい。「アク」がほとんどでないから10分ぐらいで茹であがり、あとは余熱で火を通す。やはり大量にゆがいた方がおいしい。僕の祖母はドラム缶に薪をくべて茹がいていた。
ところで、竹かんむりに旬と書いて筍(たけのこ)という。よく「旬のもの」とかいうけど旬ってどれくらいの時間なんだろう? 僕も最近知ったのだが旬は時間を表す単位で「一旬」は約10日間だそうだ。つまり筍ほど「この一旬に賭ける」素材はない。掘るとき、茹でるとき、料理するタイミング、食べられる期間...
僕は筍料理はグリルがいいと思う。できれば炭で焼きたい。焼けるときの香りがたまらない。焼き上がりに塩と上質のオリーブオイルをかける。いわゆる「一旬をいただく」瞬間だ。
桜が散り、地物の筍が出回り、ツバメが宙を舞い、花水木が咲く頃、僕はこの季節の空気の「におい」がたまらなく好きだ。そして僕の嫌い(苦手)な梅雨がやってくる。